開放ではとろける自然なボケ、絞るとハイコントラストな線の太い描写の二面性が味わえるレンズ
おすすめ度
購入のしやすさ 5/10
Contax Cマウント(内爪)レンズは、マウントアダプターが高価なことから人気が無く、市場価格は比較的安価です。 本レンズのコピーの、希少なJupitter-3(Contax C)と同等程度で購入可能です。
使いやすさ 6/10
マウントアダプターをどう用意するのかという問題があります。下記の自作簡易マウントアダプターであれば、数百円で制作可能です(多少の工作は必要)。それ以外にヘリコイドアダプターが必要になります。これらが用意できれば、満点です。大きさも素晴らしく、Sonnar特有の、高コントラストでしっかりした線を描く、標準レンズとして大活躍できます。開放でもピントの山は比較的分かりやすいレンズです。
現代レンズと比較した描写の独自性 6/10
ぐるぐるボケは発生しません。T*コートの恩恵なのか、ゴーストやフレア非常に起こりにくいレンズです(減点要素)。かといって、現代レンズのような解像力はありません。高コントラストですが、優しい線の太い描写をします。
総合 6/10
このレンズ、Contax Cマウントアダプター所有の有無でお勧め度は変わります。所持しておらずヘリコイドアラプターのみであれば、お勧めは6/10です。最も安価で簡単な方法は、M42ボディーキャップの加工ですが、穴開け工作が必要ですので、万人向けではありません。もし、Contax Cマウントアダプターを、すでに所有しているのであれば、お勧め度10/10です。
このモデルの詳細
LENS-DB.comによると、3群7枚の典型的Sonnarです。50mm F1.5のオリジナルは、Carl Zeiss Jena名で、1932年から販売されたSonnarだそうです(LENS-DB.com)。オリジナルと比較しても、T*の有無くらいで、レンズ構成図に変化がありません。しかし、50mm F2のモデルは3群6枚で、3群目が1枚少なくなっています。Contax C(inner nail 内爪)は、Contaxの交換レンズ(もしくは標準レンズ)ですので、ヘリコイド機構はカメラに依存し、レンズは、ヘリコイドレスです。
絞りは、この時代の絞りらしく、星形になります。
この個体について
本レンズは、Zeiss-Opton表記ですので、1953年以降に、Oberkochenで、ContaxⅡaかⅢa向けに製造されたものと予想出来ます。シリアル番号は684,***です。
Camera-wiki.orgによれば、Zeiss-Optonの製造番号は以下です。
1946-1951年:10,000~500,000
1951-1953年: 500,000~1,100,000
1953-1959年: 1,100,000~2,600,000
シリアル番号684,***ですので、1951年製造であることが予想されます。入手先はヤフオクでした。前玉周辺のバルサムにコバ材が滲んだ「ジャンク」で、1万円と格安でした。
撮影準備
マウントアダプター
市販品
もっとも王道はContax C(内爪)マウントアダプターです。これは内爪・外爪両方使えます。かつ内爪で使うとヘリコイドが使えます。数年前からは圧倒的に安くなったマウントアダプターですが、今でも高価です。AliExpressで、比較的安価なものを入手しました。
・Contax C - L39, L39 - LM, LM - NEX(ヘリコイド)
・Contax C - L39, L39 - NEX
カメラボディーキャップの応用
M42マウント用のカメラボディーキャップに穴を開けて、両面テープで固定し、M42ヘリコイドマウントアダプターでフォーカスシングする方法です。SONY Eマウントでは、M42ヘリコイドは12-19mmが適合します。これに、M42-NEXの1mmプレートを付けると、オーバーインフで、無限遠が出せます。私は、市販品よりも寄ることができるため、こちらの方が好きで、度々この方法を用いていました。
3Dプリンター出力(STLデーター)
M42マウント用のカメラボディーキャップに穴を開けたものに相当するSTLデータをアップロードしておきます。
リアキャップ
M42延長
M42ボディーキャップに連結して使用した場合、リアキャップが問題になります。そこでM42を延長したキャップを作成しました。
Contax C(内爪)リアキャップ
オリジナルの状態で使うことを想定し、リアキャップを出力しました。
レンズフード
T*コーティングがあり、比較的逆光耐性は強いですが、フードを装着すると、やはりコントラストは高くなります。フードを作成しました。
撮影(作例)
レンズキャップを用いて、Eマウントに接続すると、ヘリコイドで30cm以下に寄れます。
市販品のマウントアダプター+M42-M42ヘリコイド(L39フランジバック用)やLMヘリコイドを用いても30cm程まで寄ることが可能です(上よりも最短は伸びます)。
F1.5の開放では、かなりボケます。
アウトフォーカス部分が、ぐるぐるボケが発生していますが、激しくはありません。
ボルゾイ君に遊んでもらいました。
少し絞ると、シャープになります。
アンダー気味では、こってりとした色のりになります。
ピンク色が綺麗に出ます。
フードを被せると、非常にハイコントラストな描写になります。
この色のりの良さは流石です。1950年代のコダクロームの感度はわかりませんが(どれ程使えるものだったのか)、明らかにカラー耐性もありますね。
F8で、カリカリにシャープではありませんが、十分シャープな解像をします。
一転、開放ではとろけます。
実は、Yashica/Contax Planarとは比べものにならないぐらい、好きなレンズです。
ありがとうございました。