青 × トリプレットの優しさ
おすすめ度
購入のしやすさ 8/10
このレンズユニットは、複数種類の安価なカメラに取り付けられていました。現在でも、かなり手頃な価格で、多く中古市場に流通しています。
使いやすさ 7/10
使いやすい点
- ヘリコイドを備えているため、別途ヘリコイドが不要です。
- シャッターユニットに“Tモード”があるので、使用にあたってシャッター羽根を取り外さずに使用可能です。
- フランジバックを調節しても、全体として非常に小型です。
- 軽量で取り回しが良いため、気軽に持ち出せます。
- コーティングが施されているのか不明ですが、耐逆光性能は低くはありません。
- 前玉レンズのハウジングに19mm×0.75のネジがあり、Hoodがセットできます。
使いにくい点
- 何らかのフランジバック調整(アダプター)が必要です。
- 小型なため、合焦操作・絞り制御操作が行いづらいです。
- ヘリコイド付きですが、最短撮影距離は3.5feet (1m)と長めですので、マイクロヘリコイド等で短縮する方が良いと思います。
現代レンズと比較した描写の独自性 6/10
- 低光量時は、寒色に転びます。いわゆるシュナイダーブルーが現れます。
- 開放では、トリプレットらしい、優しい描写です。
- 開放では、若干の周辺光量落ちがあります。
- 絞ると中心解像力は向上しますが、周辺は甘いままです。
- 白色では、僅かに滲みます。
- 口径の問題なのか、トリプレット特有の派手な玉ボケは確認出来ませんでした。
総合 7/10
多少の工夫(アダプター製作)が必要ですが、十分にオールドレンズの醍醐味が味わえます。さらに、描写は破綻しにくく、扱いやすいレンズです。シャッターユニットに“T”があれば、非常に簡易に取り付け可能です。
このモデル
無一居さんによると、Radionarは、SchneiderのTriplet型に付与された名称です。同じTriplet型名称にReomarがあります。RadionarとReomarの違いですが、無一居さんはRodenstockでもReomarの名称が使われているため、SchneiderとRodenstockの共同開発にはReomarの名称を与えていると考察されています。Wikipediaによると、Reomarは、主にKodak Retinetteに付けられていた様です。
撮影準備
16.74mmのTubeでL39フランジバックとしました。
内面処理
3Dプリンター出力品の内面は、アクリル塗料(ターナー色彩 アクリルガッシュ 暗黒ブラック)の塗布を行いました。
この塗布には、筆を用いるよりも、キムワイプか、ケイドライが向いていると思います。
カメラへの結合
L39化したものを以下の3つでSONY Eマウントに結合可能です。
パターン1 L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法
利点
- LM-NEX のヘリコイドが使用可能なので、最短撮影距離を短縮できます(5mm繰り出しタイプで最短撮影距離を70cmほどまでに短縮可能)。
- 絞りの表記などを中央に揃えられます。
欠点
- パターン2よりもヘリコイドの繰り出し量はやや少なめです。
- ヘリコイド繰り出しの操作がややぎこちなく、細かな調整は難しくなります。
パターン2 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)+M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法
利点
- 撮影距離、40cmにまで短縮可能です。
- パターン1よりも、繰り出し操作において、細かな調整も容易に行えます。
欠点
- レンズをマウントするとパターン1と比べ、180°反対になります。
パターン3 L39-LM + TECHART LM-EA9 :AF化する
利点
- AF化が可能です。
欠点
- この組合せでは最短撮影距離が1mと長目になってしまいます。
- TECHART LM-EA9は高価です。
- 重くなります。
しかし、このレンズは全群繰り出し方式ではありません。
そこで、合焦はレンズ固有のものを用い、マイクロヘリコイドはあくまでも補助として用いました。
そのため、L39-LMとした、パターン1を用いました。
撮影(作例)
薄暮時の低光量下では、シュナイダーブルーが表れます。これは、もう少し、長い焦点距離で表れるものと思っていたので、意外でした。
二段絞り込んでも、青色は消えません。
光が十分あると、青は消えます。
さらに、光があると白は滲みます。
晴れの日中でも、日陰に青が現れます。
絞ると中心部はそれなりに解像しています。
中心に比べ周辺は解像が甘いです。
ほんの僅かに、周辺光量が落ちます。
小型・軽量で、取り回しの良いレンズです。
ありがとうございました。