KMZ Industar-22 P 50mm F3.5

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時々エラーを出すTessar型

おすすめ度

購入のしやすさ 6/10

数年前には5千円~8千円程度だったと記憶していますが、今では1万円前後が相場のようです。玉数は十分豊富で、割高ですがAmazonでも購入可能です。

使いやすさ 7/10 (9/10)

無限遠ロックがかけられるアダプターを見つけることができれば、快適に使用できます(私はL39-LMプレート(35-135)を切削して加工しました。後述

ロックピンを用いたヘリコイド操作は、非常に快適です。「焦点距離2.5mの時は、90°」といった風に理解してしまうと、速写性に優れます。非常に軽量かつ小型(沈同の有無に関わらず)で、機動性に優れます。レンズ先端の絞り調節機構は、それが奥まったところに配置されるJupiter-12Orion-15に比べて、十分快適に操作できます。また、この絞り操作は、適切なクリック感も維持しています。

唯一の欠点は、最短撮影距離が1mと耐えがたく長いことです。これは、マイクロヘリコイド付きアダプターで解消すべきです。このレンズの合焦方式は全群繰り出し方式ですので、マイクロヘリコイドを用いる事に抵抗はありません。

現代レンズと比較した描写の独自性 6/10

Tessar型の宿命で、良い意味で非常によく写ります。

  • 最短撮影距離で非点収差が発生することがあります。
  • ごく希に口径食が発生します。
  • シビアな状況では、フリンジが出てきます。
  • それ以外の明確なエラーは、ほとんど発生しません。
  • 耐逆光性能も、かなりあります。

最新レンズのようなジャープさはありませんが、開放でもやや固めで十分に解像します。1段絞ると、高コントラストで、締まった絵をたたき出します。

総合 9/10

ニッケルElmarの模造品が多く出回っているという話をよく耳にします。おそらく、Industar-22がベースとなっているのでしょうか。フェイク品を見抜く事が難しそうなので、私はニッケルElmarを購入できていません。Elmarの方が圧倒的に品質が良いと解説される方もいらっしゃいます。

これ程そっくりであれば、「安価なIndustar-22でも良いのではないか?」とも思ってしまいます。Industar-22の流通価格は、真贋補償のあるElmarの1/5程度です。

操作性は非常に優れます。たまにエラーをたたき出す、未成熟さが残るTessar型に愛着がわきます。

このモデル

Tessar型の3群4枚です。

Industar-22 50mm F3.5の外観は、1930年に発表されたEimar 50mm F3.5にそっくりです。Industar-22 50mm F3.5のレンズ構成は、Soviet CAMS.comによると、Tessar型であり、Lens-DBで示されているニッケルElmarのレンズ構成と、細部は異なりますが、Tessar型で一致しています。この外観が酷似したレンズは、戦後補償の1つだったのか、模造だったのか不明です。

Industarは、「工業製品」という意味だそうですが、旧ソ連製のTessar型に命名されていた名称です。Industarは非常に多くのバリエーションがありますが、焦点距離と開放F値が同じであれば、Tessar型で、「基本」同じレンズのはずなのですが・・・。そうはならないところが、ロシアンレンズの深い部分です。

Soviet CAMS.comでは、Industar-22の各モデルが27バリエーション収録されています。この個体は、ロックピンが新タイプでPT5745以降のモデルであることが分かります。日付シリアル番号入りの赤Pマーク入りです。

Industar-22は、Zorki-1やZorki-2と一緒に(取り付けられて)販売されていたようです。1945年から1958年まで、長期間に渡って製造されたモデルであるため、中古市場では非常に多く見つけられます。

1953年にKMZで製造されたモデルで、Red P(コーティング)が施されたもの

撮影準備

マウントアダプター

このレンズはL39マウント(ライカスクリューマウント)です。

以下の3つでSONY Eマウントに結合可能です。

しかし、TECHART LM-EA9 は重く、AFも爆速ではありません。パターン1のL39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法を用います。


パターン1 L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法

利点
  • LM-NEX のヘリコイドが使用可能なので、最短撮影距離を短縮できます(5mm繰り出しタイプで最短撮影距離を40cmほどまでに短縮可能)。
  • 絞りの表記などを中央に揃えられます。
欠点
  • パターン2よりもヘリコイドの繰り出し量はやや少なめです。
  • ヘリコイド繰り出しの操作がややぎこちなく、細かな調整は難しくなります。

パターン2 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法

利点
  • 撮影距離、30cmにまで短縮可能です。
  • パターン1よりも、繰り出し操作において、細かな調整も容易に行えます。
欠点
  • レンズをマウントするとパターン1と比べ、180°反対になります。

 

パターン3 L39-LM + TECHART LM-EA9 :AF化する

利点
  • AF化が可能です。
欠点
  • このレンズの特徴である、軽量&ノブの迅速な回転によるフォーカシングによる機動性が喪失します。
  • この組合せでは最短撮影距離の短縮は僅かです。
  • TECHART LM-EA9は高価です。
  • 重くなります。

無限遠ストッパー問題(L-39 LMプレートの加工)

L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き)で使用するにあたり、注意点があります。

レンズをマウントした際に、青のノブが赤のノブを超えて回転するプレートを選ぶべきではありません。青のノブが回転しなくなります。青色のノブは、緑色の範囲で回転するプレートを選択する必要があります。今回はL39-LM(35-135)を用いました。しかし、このプレートも完全にはフィットしません。無限遠ロックとアンロックがスムーズに出来ません。

さらにL39-LM(35-135)の赤の部分を削りました。


沈胴問題

SONY Eマウントを使うと、沈胴でセンサーと干渉するという話もあります。α7SⅢでは干渉しなさそうですが、安全のため水道用ゴムパッキンを挟み、クリアランスを確保しました。これで沈胴させると、LM-NEXマウントアダプターのエッジ、ぎりぎりで収まります、

撮影(作例)

開放でも、かなりシャープな像を描きます。さすがTessar型です。

2段絞ると、かなり解像が増加します。

まれに、ぐるぐるボケ 非点収差が発生します。

逆光でも、かなり粘ります。

希にゴーストが発生しても、派手なものにはなりません。

前傾の二線ボケは、いまいちです。

ボケは、自然なものです。

マイクロヘリコイドを使うと、最短撮影距離1mはかなり短縮可能です。

非常に使いやすいレンズです。

ありがとうございました。

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