LZOS Jupiter-12 35mm F2.8

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ロシアからの暴風の洗礼

おすすめ度

購入のしやすさ 7/10

本家Carl Zeiss Biogonと比べると、中古流通量が多く、1万円~と格安です。これは、35mm F2.8というスペックを考えても、悪くない価格だと思います。

使いやすさ 6/10

旧CONTAX C(Nikon S) マウントです。また、リアキャップが付属していない個体の場合、代替品を探すのは厄介です。また、後玉の干渉(ミラー機の場合や小さなセンサー機の場合)が起こりえるため、注意が必要です。これらをクリアーすれば、35mm F2.8ですので、使い勝手が良いレンズです。絞りの開閉が、内側のリングを回して行うため、大変であるという欠点はありますが・・・。

現代レンズと比較した描写の独自性 4/10

最新レンズの、カリカリな解像感は得られません。ロシアレンズらしい、淡泊な色のりが味わえる楽しいレンズです。

総合 6/10

随所にロシアらしさが感じられるレンズです。カメラと適合させることさえ出来れば、十分に楽しめるレンズです。

 

モデル詳細

Zorki用のライカスクリューマウント(L39)と、Kiev用の旧コンタックスCマウントが存在する、Jupiter-12は、旧ソ連で1950年から販売されたレンズです。

IndustarはTessar型、HeliosはDouble Gauss型と言った様に、Jupiterは、ロシアレンズの中でSonnar型に付与される名前だと思っていました。ですので、当初、私は、Carl Zeiss JenaのBiogonのコピーレンズであるこのモデルに、“Jupiter”の名が付されている理由がわかりませんでした。

上のレンズ構成図は、LENS-DB.comの構成図をトレースしたものですが、これを見て納得しました。また、spiralさんの解説から、そもそもBiogonがSonnar由来だったということを理解しました。

Jupiter-12は後玉の出っ張りが、とても特徴的なモデルです。一眼レフ時代の先人達は、このレンズを使用しようとして、レフ板との干渉に泣かされたそうです。

SONY Eマウントアダプターに装着しても、明確にでっぱっています。

ミラーレスであっても、これをボディー内に入れるには、かなり勇気が要ります。

Biogonを設計した人は、よくこんな「ボディー内にレンズを納める」という奇想天外な発想をしたものだと思います。

この個体について

これは、私が初めて手にしたロシア製レンズです。

ロシア製レンズで、まず最初に驚いたことは、メーカーという概念が存在しないことです。あえて、メーカーを定義するなら「ソビエト連邦」でしょうか?

そのうえで、製造工場が記載されています。

Jupiter-12は、元々、モスクワ近郊のKMZ(クラスノゴルスク機械工場)で製造されていたみたいです。その後、モスクワ近郊のLZOS(リトカリノ工場)やウクライナのArsenal(アーセナル工場)でも製造されましたが、1980年代にはLZOSのみの製造になり、1980年代半ばで製造が終了したみたいです。

ヤフオクで購入したこのレンズは、LZOSで1975年に製造された個体です。1975年はベレンコ中尉亡命事件の1年前で、東西冷戦の真っ只中で、ブレジネフ全盛期の頃です(ソ連経済の衰退期です)。これ以降、どんどん、ソ連製レンズのクオリティーは低下していくみたいです。

本個体は、Kiev用の旧Contax Cマウント用の、黒モデルの個体です。ライカスクリューマウント(L39)ですと、1万円以上高価でした。

撮影準備

無限遠問題

さらにこの個体は、出品者から、「距離計が狂っている」との説明があり、ジャンク扱いとして破格で出品されていました。確かに付属してきたマウントアダプターに装着し、無限遠に合わせても、4m程にしかピントが合いませんでした。

この原因として考えらるのは以下です。

  1. 分解、再組み立て時に、ヘリコイド組み方がおかしかった。
  2. 分解、再組み立て時に、レンズの締め付け方がおかしかった。
  3. そもそも不良品であった(ロシアレンズではよくある話らしいです。詳しくはソビエトカメラ党宣言 中村 陸雄 著 参照。

側面のヘリコイドと鏡筒との関係を見ると、他の同モデルのレンズのそれを見比べてみても、特に違和感はありません。ですので、2.か3.の理由かと思いました。

一方、ロシアレンズに標準搭載されている、黄色いあの忌々しいグリスによる、重いヘリコイドではありません。誰かが一度分解して、世界標準(もしかしたら日本標準)グリスに換えたのでしょうか?

困り果てて調べてみると、このモデルで「無限遠が出ない」問題は比較的多いらしく、何と「後玉を緩める」という解決策が示されていました(ソ連レンズにぴったりの解決策です!)。

試してみると、2回転ほどさせると、ちょうど距離指標と連動するようになりました。

もしかすると、製造組み立て時に、そもそもちゃんと組み立てられてなかったのかも知れません。

このネジは非常に粘りがあり、そのままでも良いとは思いますが、やはり精神衛生上良くありません。そこで、透明の自動車内装接着用、エーモン はがせるシリコン粘着剤を薄く塗り、外れないようにしました。

リアキャップ問題

今回購入したレンズにはリアキャップが付いていませんでした。

マウントアダプターに納めて、SONY Eマウントリアキャップを装着し、収納する方法もありますが、収納に場所をとりますし、そもそも、Eマントでもあの出っ張りです。リアキャップと確実に干渉すると思います。

また、この後玉の出っ張りため、通常の旧Contax Cリアキャップではなく、延長したものが必要になります。そこでFusion360で設計して、3dプリンターで出力しました。

私の初めてのロシアレンズ購入では、ロシア製という強烈な暴風にさらされました。

撮影は旧Contax C → Leica MLeica M → Sony Eを使用しました。

撮影(作例)

開放では、優しいボケが見られます。

準広角ですので、F16まで絞って、パンフォーカスにして、使えます。

35mmでF16 1.5mに合わせると、0.97mから3.30mまで合います。

2mに合わせると、1.1~7.5mまで合います。まるで、写るんですの様な楽しさがあります。

MFレンズなのに、ピントを気にしなくても良い。動体撮影にはもってこいです。

 

春のかおりでしょうか? それとも・・・

逆光では、十分なハレーションが生じます(笑)。

こういったところもロシアレンズらしい点です。

絞り込んだ状況では、若干の周辺光量落ちが観察されます。

今日は、クリームのダックスくんと、ご挨拶できて、とっても上機嫌でした。

分厚いレンズを何枚も重ねているのに、こってりとした色のりを期待しますが、実際には、ややあっさりとした色あいのレンズです。これは、Sonnarっぽくないですが、東側の国のレンズらしいとも言えます。

今回はヘリコイド付きアダプターですので、約30cmまで寄れます。

梅はもうすぐ終わりです。

桜はまだです、来週ですかね。

ありがとうございました。

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