近接撮影が得意なレンズ・・・探偵用
おすすめ度
購入のしやすさ 7/10
ドイツのカメラ産業でERNEMANNが果たした役割を考えると、日本国内での人気は低く、ERNEMANNのスプリングカメラは、状態の悪いものは、ヤフオクで3千円程度から入手可能です。本レンズを備えたBobⅠは、日本国内流通量も多く、比較的入手しやすいカメラです。
使いやすさ 4/10
80mm画角のレンズは、フルサイズセンサーで使用すると「ポートレートレンズ」ですが、本レンズは開放F値が示す様に、あまりボケが発生しません。人物ポートレート用途には厳しいスペックです。また、本レンズはヘリコイドレスです。ヘリコイド付きマウントアダプターの使用が必須です。このレンズのフランジバック調節は、大型にならず、入手しやすい材料でも行えるため、比較的容易です。しかし、幾つかの工作が必要ですので、万人にはおすすめ出来ません。合焦のためのヘリコイド移動量が少なくて済むため、使いやすいレンズです。一度使用できるようにしてしまえば、約100年前の景色が容易に楽しめます。
現代レンズと比較した描写の独自性 8/10
暗いレンズなので被写界深度は深く、開放でピントの山がつかみやすいレンズです。少し絞ると、逆にピントを合わせにくく、解像力も低下します。ミラーレスや一眼レフで使用するなら、このレンズは開放が正解だと思います。ハレーションが酷く、フードがなければ日中屋外で、画面が真っ白になります。フードを常用したとしても、マゼンダ被りやが出やすい印象です。時々、近景撮影(2m以下)で、中心部は約100年前のレンズとは思えないシャキッと像を結ぶことがあります。この時の絵は、とてもクラッシックレンズとは思えない、素晴らしいものです。このときも、四隅の遠景は流れています。
総合 8/10
ハレーション対策さえ出来れば、操作性は良い、低コストなレンズです。近景は派手な収差は出ませんが、遠景は非常に流れます。しっかり「クラッシックレンズ」の写りです。
このモデルと、この個体について
ERNEMANN DETEKTIV APLANAT 80mm F6.8は、ERNEMANN のBOBⅠという折りたたみカメラのレンズとして、ヤフオクで三千円ほどで入手しました。
4×6.5cm判(ベスト判)のカメラにおける、80mmは35mm(フルサイズ)換算で、45mm相当となり、当時としては広角であったと考えられます。
Camera-wikiによると、このBOBⅠは1903年~1926年まで製造されたモデルです。シャッターレンズユニットにヘリコイドがありません。ヘリコイド付きマウントアダプターが必須になります。今回は、M42ヘリコイドアダプターと、3Dプリンターを用いましたが、レンズが小さいため、M42ヘリコイドアダプター + M42延長チューブ(マクロチューブ) + M42ボディーキャップに穴を開けたものでも対応可能かと思います。ハレーション対策としてフードも必要になります。コートなしレンズは、斜光やサイド光でも、壮大なハレーションが発生します。開放F値が大きいため、ピントが合いやすく、ピントの山も分かりやすいレンズです。しかし、少し絞ると、ピントの山が見えなくなってしまうので、注意が必要です。
DETEKTIV APLANATとは、探偵/秘密警察のAPLANATという意味みたいです。小型レンズという意味でしょうか?Camera-wikiのERNEMANN広告のページに1913年の広告が載っています。私が使ったこのレンズの感想は、遠景は四隅が流れます。近景で開放撮影(上記ページのセルフィー)が最適と思われます。もっとも、一眼カメラでないとフォーカス調整は神業ですし、当時のフィルムの解像力を考えると、何とも言えませんが・・・。
撮影準備
マウントアダプター
25mmの長さの筒に、M42ネジの付いたアダプターを作製しました。
これに装着するとオーバーインフ(Over Infinity)です。あと、数ミリ長くても(27mmでも)良いかと思います。レンズの無限遠~1mまでのヘリコイド移動量は僅かで、5mm程です。ですので、25mmアダプターでも、M42-NEXヘリコイドアダプターを用いたSONY Eマウントの撮影では、最短撮影距離0.5m程にすることが可能です。
フード
このレンズの前玉には、フィルター枠がありません。前玉の外側の金属枠も小さく、フードを設置するスペースを、確保するのは困難です。そこで、上記マウントアダプターの外側にネジを切って、ねじ込み式フードを制作し、使用しました。
フロントレンズキャップ
フードに使用したネジ溝を使って、フロントレンズとシャッターユニットごと覆ってしまう、ねじ込み式レンズキャップを作製しました。
撮影(作例)
ドックランで、トイプードル君にちょっかいをかけています。絞っても解像力は上がりません。マゼンダ被りも派手に出ます。
この絵では、太陽光を反射した毛や芝生が滲んでいます。
白は、かなり滲みます。オールドレンズの定番ですね。
太陽光の下では、2,3m以上離れるとダメな写りになります(褒めています)。
酷いマゼンダ被りですね。
上の写真の上の四隅拡大を、下に示します。
ボケが流れてぐるぐるになっています。
これも気のせいか、ぐるぐるボケが発生しそうな雰囲気です。(いや、発生していますね)
このダメさは、クラシックレンズですね。
日陰に行って、近接になると、急にシャッキリとした像になります。さっきまでのダメダメは何だったのでしょうか?
近接撮影は、十分にこなせます。
ありがとうございます。