晩年の中平卓馬氏が愛したレンズ
おすすめ度
購入のしやすさ 10/10
Canon New FD レンズは中古市場では、まだ不人気です。さらに100mm F4という非常に地味なスペックのレンズです。1000円~という安価に購入可能です。ただしFDマウント、New FDマウントレンズは、分解清掃が非常に厄介な構造であることが多く(特に後玉)、状態の良いものを厳選するべきです。
使いやすさ 8/10
非常に使いやすいレンズです。ピントの山も明確ですし、逆光耐性にも優れます。滲みも起こらず、操作性は現代レンズそのものです。唯一の弱点は、レンズ単体455gという重量です。マウントアダプター分、ボディーから離れた場所に重心が来るため、実重量よりもさらに重く感じます。
現代レンズと比較した描写の独自性 2/10
抜けが良く、色のりが良く、逆光耐性も強く、解像度もコントラストも十分です。ほぼ現代レンズです。アンダーでは赤が強く出てきます。粗を探せば、パープルフリンジと二線ボケが時々現れます。また、6枚絞りが、六角形になります。「ボケが美しくない」と表現することも可能ですが、換言すれば、それ以外の粗がほぼないレンズだと思います。時々四隅のいずれかが、僅かにけられることがありましたが、本来のボディーとは異なる、マウントアダプター使用の影響かもしれません。描写は現代でも十分に通用するものであり、オールドレンズとしてのアイデンティティーは低く評価せざるを得ません。
総合 6/10
1979年販売開始のこのモデルは、オールドレンズと同一構成ですが、それをコンピューター解析とコーティング技術で、当時の最良の状態に仕上げたCanonの力作だと思います。確かに、現在の市場価格は、中庸なスペックと流通量の多さを適切に評価していると思います。しかし、このレンズの描写力は中古市場価格を超越した、非常にコストパフォーマンスの高いレンズだと思います。防湿庫の体積は必要ですが、中望遠画角を多用するのであれば、所持しても良いレンズだと思います。
このモデルと個体
このレンズは3群5枚のHeliar (Dynar)型です。国産Heliar型は希少です。この中では、比較的販売が新しい本レンズですので、同じHeliar(Dynar)型であっても、十分にブラッシュアップされていることが想像できます。特に鏡筒は、Canonのマクロレンズ伝統の、前玉が内側に入り込んだ、フード兼用の鏡筒です。開放F4という地味なスペックですが、十分洗練された写りだと思います。
晩年、中平卓馬氏はこのレンズを用いて、ISO100のフィルムで、F11 シャッター速度1/125、縦フレームで撮影されていました。 奇抜な撮影に思えますが、この頃のマクロレンズは「複写」が目的であり、絞って使うのが最良の選択であったことを考えると、開放F4のレンズのF11は、理論的には最も優れた解像度が得られるはずです。しかし、夏の午前中の屋外で、F11、シャッター速度1/500でISO 20000です。速度1/125としても ISO5000はISO100のフィルムを増感しても、追いつかないで荒れるとおもいます。これが、アレなのでしょうか?
エクステンションチューブ FD50が付属して、状態が非常に良好な個体を4,000円程で入手しました。エクステンションチューブ は今回使用していません。私はFDマウントとNew FDマウントのマウント面を外した後、組戻しが苦手ですので、今回は状態の良い個体を購入しました。
撮影準備
マウントアダプターは通常ですと、FD-LM/LM-NEX(ヘリコイド付き)の組合せがおすすめですが、このレンズは、そもそもマクロレンズです。FD-NEXのみでも十分だと思います。
撮影(作例)
このレンズは、現代レンズと遜色なく、シャープに解像します。
F4開放でも、解像感は十分です。
F8まで絞ると、さらに解像感が増します。
背景に二線ボケが現れます。これが嫌いな人も多いかと思います。しかし、このシャープさは素晴らしいです。
六角絞りは、残念なポイントです。まあ複写用途では、ボケの概念が無いのでしょう。
アンダー部分で赤が強く出てくるのは、Canonレンズだからでしょうか?
非常に色のりの良いレンズです。
僅かに四隅にケラレが現れる場合があります。
絞っても良し、開いても良しの、素晴らしい描写力のレンズです。
ありがとうございました。