最安値で楽しむ、標準Sonnar純血の末裔
おすすめ度
購入のしやすさ 9/10
Jupiter-8の中でも、旧Contax 内爪マウント(Kievマウント)レンズは、中古市場に多く溢れています。さらに、Jupiter-8Mになると、ヤフーオークションでは1~3千円以下で状態の良い個体が販売されています。導入に際して多少ハードルの高い、旧Contax 内爪マウント(Kievマウント)ですが、実際に中古個体を購入する際には、ヘリコイドの動作トラブルは無関係ですので、下手なL39マウント個体を購入するよりも、手軽に手を出しやすいと思います。
使いやすさ 6/10 (8/10)
マウントアダプターをどう用意するのかという問題があります。Kiev (旧Contax 内爪)マウントは、レンズ自体にヘリコイドを持ち合わせていませんので、マウントアダプターで何らかのヘリコイド機構が必要になります。
このレンズの最大の欠点は、マウントアダプターが用意できるか?です。マウントアダプターが用意できたとするならば、使いやすさは8/10です。以下に使いやすさについて記載します。
使いにくい点
- 逆光ではフレア&ゴーストが発生します。
- マウントアダプターによって最短撮影距離が異なりまが、広く販売されている、SHOTEN マウントアダプター SCM1 (ヘリコイド付きLM-NEXは必須)では、最短撮影距離が80cm程度と長めです。対策として、回転式ヘリコイド機構付きマウントアダプターとL39-LMプレートと ヘリコイド付きLM-NEXで50cmに縮められます。
使いやすい点
- 小型軽量で取り回しの良いレンズです。
- ピントの山が分かりやすく、合焦操作が非常に楽です。
- 開放から十分に使える描写です。
- 絞り機構にクリックがあります。
- 二面(表・裏面)にF値の表示機構がある。回転式ヘリコイドのアダプターを使用する上で非常に使いやすい機構です。
現代レンズと比較した描写の独自性 6/10
耐逆光性は高くはありません。フレアが発生すると色のりが悪くなります。順光~斜光では、こってりとした濃厚なやや暖色系の色で描写します。
開放では、非点収差は発生せず、自然なとろけるようなボケになります。点光源は、輪郭を残した円形ボケです。まさにSonnarです。周辺光量落ちは観察出来ませんでした。
2段絞ると、それなりにシャープになります。星形
総合 8/10
マウントアダプターだけ解決出来れば、全員におすすめしたいレンズです。本家Carl Zeiss Sonnar 5cm F2の約1/10~1/5の価格で、ほぼ同様な描写を楽しめる、抜群のコストパフォーマンスに優れるレンズです。
このモデル
Jupiter-8は、Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F2のコピーレンズです(正確には単純にコピーというよりも、「技術移転」といった方が正しいのかも知れません)。Jupiter-8は1951年から、主にKMZ工場で製造されました(一部では、アーセナル工場やGOMZ製も見かけます)。
Jupiter-8の改良版であるJupiter-8Mは、主にKievのアーセナル工場で1959年から生産されおり、Kiev 4というカメラとセット販売ていました。この個体は、アーセナル工場の1975年製です。
Jupiter-8と-8Mにはどの様な違いがあるのでしょうか?
- RADOJUVAによると、Kiev3とJupiter-8をKiev4にはJupiter-8Mを、光学的に若干の変化があります。特に3群目の構造がやや異なるようです。
- Jupiter-8MではF2.8, 4, 5.6で星形絞りが現れます。Jupite-8は終始円形を維持します。
- Jupiter-8はクリック無しで無段階可変絞りに対して、Jupiter-8Mはクリック有りの絞り調節機構を有しています。
- Jupiter-8Mは二面(表・裏面)にF値の表示機構があります。これは、Kievマウントが回転式ヘリコイドを採用するため、非常に便利です。
- 真偽不明ですが、ガラス材が異なる(Jupiter-8Mの方が硬い)や、コーティングが異なる(Jupiter-8Mの方が耐逆光性に優れる)等の情報があります。
撮影準備
マウントアダプター
市販品
王道はContax C(内爪)マウントアダプターです。欠点はかなり高価です。
- 内爪使用可能 + ヘリコイド使用可能
- 外爪使用可能
数年前からは圧倒的に安くなったマウントアダプターですが、今でも相当高価です。AliExpressで、比較的安価なものを入手しました。
・Contax C - L39, L39 - LM, LM - NEX(ヘリコイド)
・Contax C - L39, M39 - M42, M42-M42(10-15mm), M42-NEXプレート
で接続可能です。
下は、同様に多少安価なものが販売されていますが、ヘリコイド機能が無いみたですので、最短撮影距離が1mほどになると思います。
価格を抑えるならば、下のヘリコイド付きをAliExpress購入することをおすすめします。
カメラボディーキャップの応用
M42マウント用のカメラボディーキャップに穴を開けて、3M両面テープで固定して、M42ヘリコイドマウントアダプターでフォーカスシングする方法です。SONY Eマウントでは、M42ヘリコイドは17-31mmが適合します。これに、M42-NEXの1mmプレートを付けると、オーバーインフで、無限遠が出せます。
3Dプリンター出力(STLデーター)
M42ボディーキャップに穴を開けたものに相当するSTLデータをアップロードします。これを、3M両面テープで固定して、M42ヘリコイドマウントアダプターでフォーカスシングします。SONY Eマウントでは、M42ヘリコイドは17-31mmが適合します。これに、M42-NEXの1mmプレートを付けると、ちょうど無限遠が出せます。私は、市販品よりも寄ることができるため、こちらの方が好きです。
リアキャップ
M42延長
M42ボディーキャップに連結して使用した場合、リアキャップが問題になります。そこでM42を延長したキャップを作成しました。
Contax C(内爪)リアキャップ
オリジナルの状態で使うことを想定し、リアキャップを出力しました。
今回は、最安値レンズですので、3Dプリンター出力品に、3M両面テープで固定したものを使用します。
撮影(作例)
光が多いと薄めの色になります。
光の加減で、Sonnarらしい、こってりした色のりの描写になります。
光線によって、虹のゴーストが出ます。
全体に、フレアで覆われることもあります。コーティングが未熟な、オールドレンズの醍醐味です。
点光源は美しいボケになります。
絞ると、解像力が上がります。
開放から十分使えます。開放が楽しいレンズです。
ありがとうございました。