Voigtländer ULTRON 50mm F2 (VITESSA)

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とろけて暴れるボケ

おすすめ度

購入のしやすさ 3/10

フィルム巻き上げのために出っ張ったプランジャーを持つVoigtländer VITESSAは、その独特な外観から中古カメラの中では人気があり、価格は高値で推移しています。それでも、Prominent ULTRON に比べると安価なものが多いです。加えて、VITESSAは1950年~1956年頃まで製造され、その多くにUltron 50mm F2が搭載されていたため、流通量も多めです。この点から、VITESSAのほうが、流通が非常に少ないUltronを搭載したVitomaticを狙うよりも現実性があります。

使いやすさ 3/10 (9/10)

以下の理由で万人向けではありません。そのため、評価は低くせざるを得ません。使用できるようになってしまえば、使いやすさは 9/10です。

使いにくい点

  • 本体から外すために多少の分解と、シャッター膜を外す必要があります。
  • ヘリコイド機構が無いため、ヘリコイド付きアダプターが必要です。
  • レンズ交換式では無いため、マウントアダプターを作成する必要があります。
  • マウントアダプターを用意できたとして、唯一の使いにくさは、絞り制御リングが小さく、操作がしにくい点が難点です。

使いやすい点

  • 小型軽量なため、機動力に優れます。
  • SONY Eマウントでは、ヘリコイド付きマウントアダプターを用いると、∞~0.5m未満まで合焦可能で非常に使いやすいレンズです。
  • ピントの山を掴みやすく、合焦操作が楽です。

現代レンズと比較した描写の独自性 9/10

  • ダブルガウス型らしい、線の細いしっとりとした描写です。
  • 開放では、非合焦面はとろけるようなボケになり、さらに、非点収差(ぐるぐるボケ)も発生して暴れます。さんによれば、「Prominent Ultron 50mm F2 では、後にぐるぐるぼけが発生しにくい」との説明がなされていました。世代差なのか、個体差なのか、派手にぐるぐるします。1段絞ってもぐるぐるは残ります。
  • 周辺の解像は怪しくなります。
  • 周辺光量落ちが発生します。
  • 絞り込むと、シャープになりますが、硬すぎず、素晴らしい描写です。
  • 耐逆光性能は、高くなく、逆光ではフードを付けても、容赦なくフレア&ゴーストが発生します。

総合 5/10 (9/10)

小型軽量で機動性に優れており、水彩画のような描写をする素晴らしレンズです。壊れて格安なVITESSAと巡り会えて、マウントアダプターを用意できれば、非常におすすめ(8/10)できるレンズです。

このモデルと個体

Camera-wikiによると、VITESSAはユニークな外観から、ドイツではScheunentor(納屋) や米国では灯台などの愛称で呼ばれていたそうです。VITESSAには、販売初期(1950年)初期~終売(おそらく1957年)までULTRON 50mm F2が搭載されています。1953年頃からCOLOR SKOPAR 50mm F3.5が搭載された廉価モデルも存在したようです。

ULTRON 50mm F2は、5群6枚の変形ダブルガウス型です。ibuyfilmさんによると、VITESSAのULTRON 50mm F2もProminentのULTRON 50mm F2も、同じレンズ構成です。

この個体は、ヤフーオークションで入手しました。フィルルの巻き上げが出来ない、シャッター精度が出ていない、レンズにカビ・曇りがあるという個体で、相場の半額程度で入手出来ました。最も気にしていた「曇り」はバルサム切れはなく、汚れでした。カビ・曇りは、簡単な分解清掃で、除去可能でした。

撮影準備

3D Printer

L39 mount adapter

分解して、レンズ&シャッターシャッターユニットを取り外しました。シャッター膜を取り除き、上のマウントアダプターに接合することで、L39マウントとして無限遠が出ました。

Front Cap

Lens Hood

 

カメラへの結合

L39化したものを以下の3つでSONY Eマウントに結合して使用しました。


パターン1 L39-LM + LM-NEX(マイクロヘリコイド付き) :L39をLeica Mマウントに変換する方法

利点
  • LM-NEX のヘリコイドが使用可能なので、最短撮影距離を短縮できます(5mm繰り出しタイプで最短撮影距離を70cmほどまでに短縮可能)。
  • 絞りの表記などを中央に揃えられます。
欠点
  • パターン2よりもヘリコイドの繰り出し量はやや少なめです。
  • ヘリコイド繰り出しの操作がややぎこちなく、細かな調整は難しくなります。

パターン2 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法方法

利点
  • 撮影距離、40cmにまで短縮可能です。
  • パターン1よりも、繰り出し操作において、細かな調整も容易に行えます。
欠点
  • レンズをマウントするとパターン1と比べ、180°反対になります。

 

パターン3 L39-LM + TECHART LM-EA9 :AF化する

利点
  • AF化が可能です。
欠点
  • この組合せでは最短撮影距離が1mと長目になってしまいます。
  • TECHART LM-EA9は高価です。
  • 重くなります。

 

今回は

L39-LMとした、パターン1とパターン3で撮影を行いました。

 

撮影(作例)

激しく、非点収差(ぐるぐるボケ)が発生します。周辺光量が低下しています。

近景も放射状にボケます。周辺部がダメダメな解像です。素晴らしいです。

絞っても、ここまで近接ですと、手前も渦巻きます。

少し絞っても、遠景はぐるぐるしています。

2段絞るとしっとりとした描写をします。

絞り込むと、収差は落ち着きます。

F16で十分な解像力を発揮しますが、シャープすぎません。

開放では、若干の周辺光量落ちが発生します。

ボケが相まって、不思議な雰囲気になります。

フードを付けいていても、これくらい逆光ではフレア&ゴーストに襲われます。

いろいろな表情を見せる、かなり楽しいレンズです。

ありがとうございました。

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