逆光でフレアに溺れる、旧ソ連製のTopogon型
おすすめ度
購入のしやすさ 2/10
流通量は極端に少なくありませんが、3~5万円程度の高値で推移しています。少ないトポゴン型でL39なので人気です。状態が良く、安価な個体は希です。特にヘリコイドグリスは、かなり問題です。このレンズの形状で、少しでも重いグリスが用いられていたりグリスが固着気味だと、レンズ自体がマウントから外れやすくなります。メンテナンスをするか、慎重に状態を吟味する必要があります。
使いやすさ 7/10
良い点
- 軽量小型です。重量60gで、無限遠時でEマウントからレンズ先端まで30mmと小型です。非常に取り回しがしやすいレンズです。
- 簡単にHyperfocalが作りやすく、撮影に集中できます。
- 鏡筒がフードも兼ねていますので、ある程度の逆光耐性があります。
ダメな点
- 最短撮影距離は1mです。今の感覚では、長く感じます。この点、ミラーレスカメラに取り付けるのであれば、ヘリコイド付きマウントアダプターが選択肢になります。
- 開放F6はやはり暗く、光の少ない環境での撮影には不向きです。
- 絞り羽根の調整が行いにくい構造です。レンズを正視して指先で慎重に操作する必要があります。これは、Jupiter12やT-43と同様です。
現代レンズと比較した描写の独自性 2/10
歪みが少なく、クセの無い良い写りをします。残念ながら、この項目では高評価出来ません。
本項目で評価できる点(現代レンズではなく、このレンズを用いる)
- 旧ソ連製レンズらしく、逆光では非常に淡白な色になります。
- 斜光~逆光ではフレア・派手なゴーストが出現します。これは絞り込んでも表れます。
- 十分な解像力ですが、それでも現代レンズには及びません。
総合 6/10
4枚構成の非常に軽量コンパクトさを特徴とする広角レンズですが、この特徴もフィルムコンパクトカメラの出現から、平凡になってしまいました。本レンズを購入する動機は、Topogon型レンズと、その開発背景に魅力を感じられるかどうかだと思います。
このモデルと個体
Orion-15 (ОРИОН-15) 28mm F6 は1960年から販売されたモデルで、Lens-DB.comによると4群4枚のTopogon型です。単純に1950年~販売されたCarl Zeiss Jena Topogon 25mm F4のコピー品と思いましたが、少し複雑なようです。
marcocavina.comによると、Orion-15は1937年に作られたOrion-2 を前身としています。Orion-2は、同じTopogon型なのに、何と225mmでF6で、80°の画角です。それは18×18cmのフィルム用だったためです。こんな巨大なフィルムは絶対に民生用ではなく、航空写真用だったのでしょう。このOrion-2をそのままスケールダウンしたものがOrion-15だそうです。
初のOrion-15はソ連のGosudarstvennyy Optical Institute (GOI)によって1944年3月に製造されています。これも、民生用でない用途として使用されたのではないでしょうか。AFが無い時代に、広角で簡単にHyperfocalが作りやすい小型レンズは、諜報活動などで貴重だったと思います。一般市場に流通するorion-15は、1960年から、KMZとZOMZの工場で組み立てられたようです。
Orion(-15)は第二次世界大戦~東西冷戦の産物だったのでしょう。そう考えると、このレンズが非常によく写るレンズである理由も、納得できます。
この個体はZOMZ工場のマークが記載されており、シリアル番号が70****ですので、同工場で、1970年に生産された個体です。ヘリコイドは重くないため、旧ソ連製製レンズによくある非常に重いグリスを、すでに交換されているものだと思われます。
撮影準備(L39-SONY E変換)
L39 マウントですので、SONY Eマウント(NEXマウント)へは3パターンが考えられます。
パターン1 L39-NEX :1つのマウントアダプターのみを用いる方法
利点
- 最も簡単に準備できます。必要なのはアダプター1つだけです。市販品で揃えるには最安価です。
- 格安L39アダプターであっても(多くのアダプターで)、距離計の指標を上面中心に揃える調節機構をもっているため、見た目も悪くなりません。
- 距離計が連動します。
欠点
- 最短撮影距離を短縮することが出来ません。
パターン2 L39-LM + LM-NEX :L39をLeica Mマウントに変換する方法
利点
- LM-NEX のヘリコイドが使用可能なので、最短撮影距離を短縮できます(5mm繰り出しタイプで最短撮影距離を25cmほどまでに短縮可能)。
- 距離計の指標が完全に中央には揃わないかも知れませんが、大きなズレも起こりにくい組合せです。
- TECHART LM-EA9等で疑似AF化が可能です。
欠点
- パターン3よりもヘリコイドの繰り出し量はやや少なめです。
- ヘリコイド繰り出しの操作がややぎこちなく、細かな調整は難しくなります。
パターン3 M39-M42 + M42-M42(10-15mm)+M42-NEX(プレート) :M42ヘリコイドアダプターを用いる方法方法
利点
- ヘリコイドが使用可能なので、最短撮影距離を短縮できます(10-15mm表記でも、5.5mmの繰り出しが可能です)。
- パターン2よりも、繰り出し操作において、細かな調整も容易に行えます。
欠点
- 距離計の指標が大きくずれる可能性が非常に強いです。修正は困難です。
今回はパターン2の L39-LM + LM-NEX を用いました。
LMマウントアダプターからL39-LMプレートを外す
よくブログやYoutubeで「LMマウントアダプターからL39-LMプレートを外すのが困難である」という声を聞きます。この点はJAPAN HOBBY TOOLのゴム製オープナーAの使用をおすすめします。これを、L39穴に差し込み捻ると、LMマウントアダプターからL39-LMプレートを簡単に外すことができます。
レンズのオープナーとして、ゴム製オープナーBも有名です。ゴム製オープナーBは、多くの種類が入ってお得感がありますが、ゴムが硬く、使い勝手が悪いです。私はサイズ的にどうしてもダメなときにのみゴム製オープナーBを使用します。
使用頻度はゴム製オープナーAを100とすると、ゴム製オープナーBは1程度です。
撮影
順光~斜光では、ハイコントラストでしっかり色が出ます。
逆光では派手なゴーストが出現したり、フレアが容赦なく出現します。
これは、絞り込んでも解消しません。
光の多いところは、淡い色で白飛びを起こしやすくなります。ソ連製レンズらしいです。
マウントアダプターのヘリコイドを併用すると、最短撮影距離を縮めることが可能です。
大きな歪も認められません。
ありがとうございました。