滲む軟調な変形Tessar
おすすめ度
購入のしやすさ 5/10
BERTHIOTの製品の中では、FLORはもっとも多く流通しており購入しやすいレンズだと思います。国内のオークションでも、常時見かけるレンズで、Cマウント、Dマウントレンズを除けば、BERTHIOTの製品の中では最安だと思います。FLORは基本Tessar型ですが、F3.5とF4.5とでは異なるようです。F3.5は一般的なTessarで、F4.5は変形Tessarになっています。
使いやすさ 2/10
このレンズのフランジバック調整は、かなり困難でした。レンズユニットにヘリコイドを持ち合わせていますが、距離計連動させるためのフランジバック調整は、かなり繊細です。フランスレンズらしく、激しく滲みます。これは絞っても解消されません。太陽光の下では、(逆光でなくても)滲みはハレーションになり、合焦も困難になります。そうでなければ、ピントの山は非常に見やすく、合焦させやすいレンズです。従って、万能な撮影をこなすレンズではありません。
現代レンズと比較した描写の独自性 9/10
軟調なレンズですが、日なたでは滲みます。この滲みがでると、真っ白になり、止まりません。Tessarの系統らしい、線が太く線が太くハイコントラストな描写を主としますが、ここに軟調な描写が加わります。
総合 2/10
非常に特徴のある描写をするレンズです。最大の弱点である滲みですが、白黒処理(RAW現像)すると、非常に雰囲気のある結果になります。一方、カラーで使用すると、なかなかのクセ玉です。カラーが標準の現代において、このレンズは万人向けではありません。これは、画面全体が滲んでも許容できる、滲み玉・クセ玉に理解のある人のみに、おすすめ出来るレンズです。
このモデルと個体
Dan FROMMさんの資料によれば、SOM BERTHIOTの表記は、BERTHIOTの歴史の中で1913年以降に使用されています。Flor F4.5は、1921年の同社カタログに掲載されるレンズです。F4.5は3群5枚の変形Tessar型です。これに対して、より高速なF3.5は1936年のカタログに登場しますが、3群4枚の典型的なTessar型になっている様です。
この個体は、ヤフーオークションにて数千円で落札しました。後玉にバルサム切れは見当たりませんでした。本レンズのシリアルNOは、B 81,***でした。無一居さんによれば1952年か1953年製になります。シャッターにTモードがありませんでしたので、デジタルカメラに装着するに当たり、シャッターを取り除きました。
撮影準備
マウントアダプター
マウントアダプターは、プラクティカM42マウントとします。
baseプレートにレンズユニットを結合させ
それをbodyにねじ込みます。
フード
フードは必須です。
レンズキャップ
撮影(作例)
開放で解像している部分は非常にシャープです。綺麗な玉ボケが現れます。
他の写真は、PhotoshopでRaw現像をしていますが、もしRaw現像を行わないと上の様になります。F8での撮影。滲むクセ玉ですが、怪しい雰囲気が出ます。
くもりでは、滲みも出ず、シャープな解像をしますが、線は太い描写です。
耐逆光性能を語れるレベルではありません。しかし、雰囲気は出てきます。
白い地面の反射は画面全体が滲みます。RAW現像でも対応出来ません。
しかし、白黒にすると意外としっくりきます。
条件によっては、非常に美しい像を出してきます。
条件がそろえば滲みも少なくなります。開放では柔らかい描写です。
絞り込むと、シャープに解像します。
ありがとうございました。